仙腸関節障害 周囲組織

仙腸関節②  

 


前方回旋の制限因子

前仙腸靭帯、仙棘靭帯、仙結節靭帯

 


後方回旋の制限因子

後仙腸靭帯                        

 


※靭帯は10〜20%しか伸びない(うねっている)。しかし、エラスチンのある黄色靭帯は伸びる。血液供給が乏しいためかなり治癒しにくい組織。

 


※多裂筋の収縮は、仙骨の前方回旋を引き起こす。

多裂筋は、椎骨の横突起〜2から4分節上の棘突起に付着。

作用は、一側が働くと同側側屈と対側への回旋。左右働くと脊柱伸展。

 


骨盤の傾きの基準

骨盤傾斜角  ASISとPSISを結ぶ線と、水平線のなす角度。正常は7〜15°       

ASISがPSISよりも下方に位置する。

 


触診

患側の場合、ASISが高位かつ前方に位置していることが多い。

ASISとPSISが高位の場合

→腸骨が仙骨に対して上方に滑っている。

 対側の下肢に短縮。

 椎間板病変などで筋攣縮。     これらが考えられる。

 


ASISが高位でPSISが低位の場合

仙骨が前方に回旋している。

 


ASIS、PSIS、腸骨稜、坐骨、恥骨の高さ

左右の高さ、身体の中心線から等距離かを比較する。

 


仙骨の回旋

仙骨溝の深さはどうか。

 


殿溝

疼痛のある側は大臀筋の緊張がなくなり平らになっていることが多い。

 


脊柱起立筋

片側や両側にスパズムがあるか。  

※神経学では筋攣縮。

定義『痛みなどに起因する局所的で持続的な筋緊張の亢進』や、

       『痛み刺激に対する防御作用の一環とした反射的・持続的な筋緊張の亢進』

 


運動

例)股関節外転 運動    抵抗あり

→同側の仙腸関節に障害があると疼痛が生じる。

これは中臀筋が働くことで腸骨が仙骨から引き離される力が加わる。

さらに、体幹側屈を加えると負荷を高めることができるため、再現しやすい。

 


仙骨は前屈60°で前方回旋するが、それ以降仙結節靭帯、胸腰筋膜などの後方の構造がきつくなることで後方回旋に切り替わる。

後方回旋が起こると、安定性を維持するために大きな筋力を要し、仙腸関節は不安定となりやすい。そのため、早期の仙骨後方回旋は、不安定性の問題が生じやすい。

例えば、ハムストリングスが硬い患者は過剰な後方回旋が起こりやすい。

 


前屈、後屈運動の検査

立位でPSISを触り前屈させる。45°前屈では仙骨は前方に移動するが、60°近くなると仙骨は後方回旋する。その間、両PSISは上方に移動し互いに近づくのと同時にASISは互いに離れるように動く。

これらは後屈時には逆の現象が起こり、寛骨は大腿骨頭に対して後方に回旋し、仙骨は前傾する。

寛骨が後方回旋すると、関節面は仙骨に対して前上方に移動する。

 


側屈運動の検査

側屈に伴い寛骨は同方向に倒れ、仙骨はわずかに逆方向に回旋する。

検査者の母指は側屈方向の母指が前方に移動する。これは仙骨回旋運動と呼ぶ。

 


股関節運動に伴う仙腸関節の検査

股関節深屈曲とともにPSISが下方に移動する。

→上方に移動した場合、屈曲側の仙腸関節の拘縮が疑われる。

坐骨結節はこの時、外側に移動する。

→頭側に移動した場合、仙腸関節の拘縮が疑われる。

立位で検査側の踵を軸に股関節を内外回旋させることで、ASISはそれに伴い内外側に移動する。

 

 

 

障害例・・・

 


前方回旋障害

ダッシュボード損傷、ゴルフや野球のスイングで前方へ強制された場合に起こる。

 


後方回旋障害

坐骨結節を打ち付ける転倒、立位体前屈位からの持ち上げ動作、片脚で立つ、股関節の屈曲・外転を維持し続ける場合に起こる。